トップメッセージ
新生チーム日軽金として、
「2023中期経営計画」の達成に挑んでまいります。
守りから、攻めへの決意を込めて
2023年度を振り返って
当社は、ステークホルダーの皆様に確かな価値を提供し、改めて信頼をいただける企業グループに生まれ変わるべく「2023中期経営計画」を策定いたしました。「新生チーム日軽金」として、2025年度の目標達成を目指し様々な施策に取り組んだ1年でありました。その具体的な事例や成果をご報告する前に、まずは当社の連結業績を総括いたします。
当社の2023年度の連結売上高は5,237億円、連結経常利益は190億円、連結売上高経常利益率は3.6%となり、前年度実績(2022年度の連結売上高5,170億円、連結経常利益89億円、連結売上高経常利益率1.7%)に比べ、増収増益となりました。その背景には、雨畑ダム堆砂問題、品質問題といった経営課題への確実な対応、コロナ禍からの経済活動の再開、原燃料価格の高騰等を反映した販売価格の改定効果、パネルシステム部門の好調やトラック架装部門の業績回復などがあったと考えております。
恒常的に連結経常利益300億円を超える企業グループを目指す
当社グループは2012年10月にホールディングス体制に移行いたしました。その後は、2018年度に連結経常利益311億円を達成し堅調に推移してまいりました。「2023中期経営計画」では、ホールディングス体制下で最も高い利益水準にあった2016年度から2018年度の連結経常利益300億円を恒常的に超える企業グループを目指してまいります。この数値目標は2023年度実績(連結経常利益190億円)を大きく上回る水準であり、乗り越える課題は多いと認識しつつも2025年度の目標達成に向け、私達の決意に少しのブレもございません。
たとえばここ数年、半導体不足に端を発したトラックシャシー供給の滞りにより厳しい事業環境にあった当社グループのトラック架装メーカー・日本フルハーフ㈱は、市況に復調の兆しがみられることに加えて販売価格の改定が進捗し、業績改善が着実に進んでおります。さらに足元では、トラック架装向けの押出製品や板製品を取り扱う当社グループ各社の業績にも連動し、好循環に繋がっております。
私達は揺るぎない決意のもと、過去を超え、「新生チーム日軽金」として、連結経常利益300億円を恒常的に超える企業グループへと飛躍してまいります。
連結業績の推移

チーム日軽金として異次元の素材メーカーへ
アルミニウム需要の見通し
日本国内のアルミニウム需要は1960年代にアルミサッシの普及、1980年代にはアルミ缶の消費拡大によって大きく増大しました。以降は、大量生産・大量消費を伴うような新たなアルミニウム需要は見出されておらず、2000年以降はほぼ横ばいに推移しています。
世界市場では、唯一、量的な拡大を続けてきた中国においても近年は世界の平均的なアルミニウム消費量とされる一人当たり年間30キログラムに近づきつつあります。日本や欧米諸国と同様に、中国においてもこの水準を大きく上回るアルミニウム需要の量的拡大は見込みづらいと予想されています。
人口一人当たりのアルミニウム消費量の推移

出所:日本アルミニウム協会資料
全世界でのアルミニウム需要の推移

出所:日本アルミニウム協会資料
「お客様の価値」を創造してまいります
アルミニウム需要の総量的な拡大が難しいとされる一方、自動車関連や半導体関連等の分野ではその需要が成長するとされています。成長分野を見定め、当社グループが持つアルミニウムに関する豊富な知見・ノウハウと、素材の持つ良さを引き出す独自の技術力を活かし、当社グループで働く一人ひとりの知恵の集積によって、「お客様の価値」を創造してまいります。
当社グループの強みは、アルミニウムという素材の特性を熟知したうえで、圧延・押出、表面処理・接合といった工法・加工技術から合金開発、設計・施工、メンテナンス、サービスにいたる総合力です。私達は、アルミニウムを素材として提供するだけの旧来の素材メーカーに留まることなく、これら当社グループの強みを集積させ、社会的な価値の創出に寄与する商品・ビジネスを提供してまいります。
絶え間なく挑戦し続ける
成長期待分野の自動車部品ビジネスを担う「日軽金ALMO」
これまで、当社グループにおける自動車部品ビジネスは、日本軽金属㈱、日軽金アクト㈱、日軽熱交㈱、日軽松尾㈱を中核に、それぞれの得意分野、工法、地域等に応じて独自の営業、開発、生産を展開してまいりました。
これを素材・工法・加工技術・開発を融合させ、当社グループ初となる市場分野に特化した会社「日軽金ALMO㈱」を2023年10月に設立いたしました。分散していた経営資源を集約し臨機応変に配分することで、自動車の軽量化対応をはじめとする「お客様の価値」を創造してまいります。
国内外で積極的に投資を進める
経済安全保障の懸念から国内回帰が進んでいる半導体分野は、当社グループにおける成長事業の一つと位置づけています。半導体製造工場向けのクリーンルーム用ノンフロン断熱パネルで成果をあげている日軽パネルシステム㈱は、今後も多くの製品供給が期待されます。こうした動向を見据え、供給能力を増強させるべく、2024年4月に下関第二工場を竣工いたしました。また、アルミニウム二次合金を製造する日軽エムシーアルミ㈱は、自動車関連等の産業発展に伴いアルミニウム二次合金の需要が急成長を遂げているインド市場の成長機会を着実に捕捉する目的で、2024年3月にインドに第三工場を竣工いたしました。
「2023中期経営計画」のもと、国内外の成長分野に積極的に投資し、マーケットニーズに対応してまいります。

新生チーム日軽金として邁進するための強固な基盤づくり
経営改革を断行する
品質問題の再発防止策として、また「2023中期経営計画」の基本方針の一つとして、経営改革を断行してまいります。経営改革の骨子は、①取締役会の監督機能強化、②事業・機能組織のグルーピングです。
まず、①取締役会の監督機能強化は、監督と執行の分離により、ガバナンスの強化を図ってまいります。具体的な取組みとして、取締役会は過半数を社外取締役で構成する体制に変え、企業価値最大化のためのグループ戦略策定をはじめとする監督機能に注力いたします。執行側は執行責任の明確化と執行権限の強化を図り、俊敏な戦略実行が行える体制を整備いたしました。監督と執行の分離によりコーポレート・ガバナンスを強化し、経営の透明性を向上させることで、ステークホルダーの皆様からの信頼に繋げてまいります。
次に、②事業・機能組織のグルーピングを通じ、個別性の高い事業特性に起因した従来の分権型統治から脱却し、チームとしてより一層連携可能な組織体制に改革いたします。市場分野やプロセス等の観点から近接する事業を「事業グループ」として運営し、新商品・新ビジネスの創出を加速してまいります。さらに、「事業グループ」として括ることで、資源配分や機能の見直しを推進し十分な人的資源のない小規模事業部門の機能・ガバナンス強化を図ってまいります。
加えて、当社グループの強みを活かし、お客様の新しい価値を創造する推進策として、「マーケティング&インキュベーション統括室」を新設いたしました。既存事業における新商品開発(マーケティング)と将来の柱となる新事業の創出(インキュベ―ション)を両利きの経営として推進してまいります。
従業員一人ひとりの心に灯をともす
経営改革を断行するためには、品質問題等の経営課題によって自信を失いかけていた従業員が、「新生チーム日軽金」の一員として誇りを持ち、日々の仕事に向き合うことが大切だと考えております。
そのために、経営トップの私が企業風土改革を主導してまいります。具体的な取組みとして、2023年4月から開始した「拠点長会議」と「職場行脚」を継続してまいります。
拠点長会議は、当社グループの各職場を概ね20人単位で括り、その代表者を拠点長に定め、毎月、約400人の拠点長が一堂に集い、当社グループの経営課題を共有・議論する会議体です。当初は、品質問題の再発防止策に関する情報共有からスタートいたしました。開催回を重ねるにつれ、多くの拠点長から、『議題を深堀りするため、少人数形式のグループディスカッションを実施したい』と提案がなされました。これは、拠点長が品質問題を自分事と捉え、再発防止策を自分たちの責任のもとで完遂する、という強い決意の表れだと認識しております。
職場行脚は、私が工場や支店・営業所等に行き、1回あたり概ね20人の従業員と対話する会合です。私から経営の思いを伝え、従業員から働くにあたっての悩みや課題などを現場の声として伝えてもらいます。対話会のなかで、生産現場で働く従業員から、『設備や職場環境の改善策を提案したあとも、その改善進捗が現場で働く私達にも見えるようにしたい』という声がありました。これは、最前線で働く従業員が職場課題を自分事と捉え、課題解決に自ら取り組む姿であり、まさに「心に灯がともる」瞬間だと感じています。現場の声に丁寧に応えていくことは当然ながら、経営のトップとして、従業員との直接コミュニケーションを通じ、忌憚なく声をあげられる企業風土づくりを進めてまいります。
サステナブル経営を強力に推進
ものづくり企業として、地球市民として
「アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく」という経営理念のもと、当社グループはサステナブル経営に邁進しております。
- 地球環境保護
- 持続可能な価値提供
- 従業員の幸せ
- 責任ある調達・生産・供給
- 企業倫理・企業統治
アルミニウムに関する総合的かつ広範な事業領域を通じて特に取り組むべき課題は何かを認識し、当社グループの持続的成長および企業価値向上のための重要な経営課題として5つのテーマを掲げています。ものづくり企業として、地域の一員として、ひいては地球市民としてその責務を果たすべく、チーム一丸となって課題解決に取り組んでまいります。
カーボンニュートラルの推進
当社グループは、様々なエネルギー消費を伴うものづくり企業であり、カーボンニュートラルへの対応は重要な責務の一つです。その解決策の中核的な役割を果たすのが、2023年4月に設置した「カーボンニュートラル推進室」です。従来、事業部門が個別に対応してきた省エネ投資や再生可能エネルギーへの代替などを、原材料調達の段階から最適な脱炭素戦略を横断的に立案・実行し、当社グループの二酸化炭素排出量を2030年までに30%削減(2013年度実績比)、2050年には実質ゼロを目指してまいります。
また、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への貢献につきましては、アルミニウム二次合金事業を持つ当社グループならではの強みを発揮し、リサイクルビジネスに連綿と取り組んできた実績があります。そのけん引役である日軽エムシーアルミ㈱は、日本、アメリカ、メキシコ、タイ、インド、中国とグローバルにアルミニウムのリサイクルビジネスを展開しております。また、日本フルハーフ㈱では、リサイクルアルミニウムを用いて大型ウィングボデーの水平リサイクルを実現し業界初となる「グリーンボデー」を製造しました。
当社グループのリサイクルビジネスの知見を活かすとともに、原料スクラップの調達ネットワークを世界レベルで強化し、展伸材の水平リサイクルにも積極果敢に挑戦してまいります。

持続的な企業成長に向け、財務・非財務の企業価値向上に尽力する
当社グループが持続的に成長するため、財務と非財務の両面から企業価値を向上させてまいります。「2023中期経営計画」では財務面の企業価値向上を目指し、新商品開発や周辺領域への事業拡大、M&Aを選択肢の一つとする売上高の増大、より収益性のある事業・商品へのシフト等を積極的に進めてまいります。加えて、私は非財務面の企業価値の根幹を成す存在は「人財」だと確信しています。「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進や「働きがいのある職場づくり」等を着実に進め、ともに働く従業員の幸せを実現し、その従業員の力の結集によって社会課題の解決に貢献してまいります。
私達が営む企業活動とは、市場競争という土俵に立ち、勝ち続けるための努力を続けることだと言い換えられます。この土俵に立つ資格は、安全対策やコンプライアンス、品質管理といった社会的規範に確実に対応して、はじめてステークホルダーの皆様から委任いただけると認識しております。私達「新生チーム日軽金」は正々堂々と相撲を取り、財務面の企業価値を向上させていくとともに持続可能な社会の実現に向けサステナブル経営を推進してまいります。
資本コストや株価を意識した経営へ
ここで、「2023中期経営計画」の達成により、どのようにして当社の株価を高め、そして株主還元につなげていくかについてご説明申し上げます。
まず、当社の連結経常利益が300億円前後に推移していた2016年度から2018年度は、PBR(株価純資産倍率)が約1倍の水準にありました。業績と株価の関係性の観点では、「2023中期経営計画」の数値目標・連結経常利益300億円を恒常的に超える企業グループに飛躍させることで、株価の向上に努めてまいります。
次に、資本効率の向上という観点では、当社は財務レバレッジの影響を受けないROCE(使用資本利益率)を連結業績の評価指標に用いております。「2023中期経営計画」では、これを事業グループ単位の業績評価指標にも適用し、個々の事業単位で使用資本コストを意識したグループ経営を推進してまいります。適正な財務レバレッジを維持しつつ、収益性と使用資本効率を高めることで、ROE(株主資本利益率)の向上にも尽力してまいります。
また、IR活動にはより一層注力してまいります。当社ホームページ等での情報開示コンテンツをさらに充実させ、加えて経営トップの私および担当役員が直接お会いし、事業環境認識や業績見通し等をご説明する機会を拡充してまいります。そして、投資家の皆様や当社の社外取締役から頂戴するご意見・ご要望をIR活動に適切に反映し、ステークホルダーの皆様との対話を重ねてまいります。
結びに
私は、2015年6月に当社社長に就き、今年が10年目となります。その間に、連結経常利益が300億円を超え、当社グループの力強さに嬉しさを覚えた年もございました。しかし、ここ数年は雨畑ダム堆砂問題、品質問題等の経営課題に心揺れ動くことの連続でした。
これらの困難な状況を企業変革、企業成長の機会に変え、「2023中期経営計画」のもと、経営体制の刷新、企業風土の改革を断行することこそが、私の使命だと強く認識しております。私は、ともに働いてくれる仲間、心に灯をともした国内外の連結従業員・約12,000名の「人財」とともに、この使命を成し遂げてまいります。
これからもなお一層、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えできるよう、私達は「チーム日軽金として異次元の素材メーカー」を目指し走り続けてまいります。