日本軽金属ホールディングス株式会社

気候変動への対応
~TCFDに基づく開示~

基本的な考え方

当社グループは、事業活動が環境に与える影響を十分認識し、関係法令の遵守はもとより、環境基本方針を定めて主体的かつ積極的に持続可能な事業と社会の実現に向けて取り組んでいます。気候変動への対応は、当社グループの重要課題(マテリアリティ)として特定しており、TCFDに基づく開示内容の充実に向けて取り組んでいきます。

ガバナンス

気候変動への対応に関する体制として、社長を委員長とする「グループ環境委員会」や「グループCSR委員会」を設置しており、これらの委員会のもとで、気候変動への対応を含むサステナビリティ推進活動計画を策定しています。
また、世界的な脱炭素の潮流の中で、当社グループとして最適な脱炭素戦略の立案と実行により、当社グループの成長戦略をより確固とするため、統合的な権限と責任を持つ「カーボンニュートラル推進室」を設置しています。現在、2050年カーボンニュートラルに向けた目標を設定し、取組みを進めております。これまでの省エネ活動やリサイクル活動に加え、お客様からの要望が高まっているグリーンアルミの確保や、使用したアルミニウムを素材として再利用する循環型のサプライチェーン構築等、当社グループとしてのカーボンニュートラル実現に向けた取組みを統合的に推進しています。

CO2排出量の推移(スコープ1・2、3)および指標と目標

当社グループは、スコープ1・2にスコープ3を加えて、2050年のカーボンニュートラルを目指し、2030年の温室効果ガス排出量(売上高原単位)を2013年度(スコープ1+2:1.41㌧-CO2/百万円、スコープ3:7.58㌧-CO2/百万円)比で30%削減する目標に向けて取組みを推進しています。
2023年度の実績は、スコープ1+2およびスコープ3とも、 前年度比でCO2排出量売上高原単位が減少しました。

【算定基準】
※ スコープ2排出量の算定方法を、ロケーション基準からマーケット基準に変更しています。当該変更により、適用する排出係数の見直しを行った結果、過年度の数値を修正しています。
※ 集計範囲: 国内連結子会社(製造)32社/海外連結子会社(製造)12社
※ 温室効果ガス排出量(スコープ1・2)は、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」および「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づいて計算しており、次のCO2排出係数を使用しています。/国内電力:環境省・経済産業省公表の電気事業者別の調整後排出係数/海外電力:各国政府公表のCO2排出係数(2023年度より)/燃料:都市ガスについては環境省・経済産業省公表のガス事業者別の基礎排出係数、それ以外については環境省令の各燃料の単位当たりCO2排出係数
※ 実績値はエネルギー起源CO2排出量のみです。

リスク管理

当社グループは、気候変動による影響を経営上の重要なリスクの一つとして捉え、管理をするために、将来におけるリスクと機会のシナリオ分析を行っています。今年度は従前の2030年に加え、2050年のシナリオ分析も行いました。シナリオ分析は当社グループの主要部門を対象に行っていますが、連結全体での影響度分析を行うべく、毎年徐々にその範囲を広げています。今後は、重要性が高いと判断した項目についての定量分析の精度を高めた上で開示内容を拡充すると同時に、目標達成に向けた取組みを推進していきます。
分析内容については「グループ環境委員会」や「グループCSR委員会」に報告し、「カーボンニュートラル推進室」との連携を図りながらリスク管理計画の策定を進めると同時に、取締役会への定期的な報告も行うことで、気候変動リスクへの対応を強化していきます。

戦略

当社グループはTCFDの提言に基づいた開示を行うにあたり、シナリオによる影響の違いが分かりやすいように、成り行きで想定される4.0℃と最も強い規制が整備された場合である1.5℃の、二つのシナリオに基づいた分析を進めています。対象年度については、分析結果に一定程度以上の確からしさを担保することが可能な中期的な未来である2030年度と、気候変動の影響がより顕著に表れると見込まれる、長期的な未来としての2050年度としています。
また、当社グループはさまざまな事業領域を抱えるため、すべての部門を分析の対象にするまでには至っていませんが、今年度については、昨年度に発足した日軽金ALMO㈱なども新たに対象範囲に加え、リスク・機会の影響度評価を行いました。
実際の分析においては、2030年度と2050年度の世界観を外部参考資料を基に想定し、そこで発生し得るリスクと機会をリストアップしました。その上で各項目における金額的影響を測り、三段階での評価を行うとともに、各項目について想定されるシナリオごとの重要度を、発生可能性と実際に発生した場合の影響度の二つの観点からマッピングし、評価しました。この分析結果を踏まえ、今後はカーボンニュートラルの推進をはじめとする具体的な対応策についての検討を進めていきます。

区分 リスク・機会のシナリオ内容 財務影響 重要度
(発生可能性×影響)
2030年度 2050年度
4.0℃ 1.5℃ 4.0℃ 1.5℃


移行 政策・法規制リスク 炭素価格の導入による原材料や生産コストの増加(調達)
炭素価格の導入による原材料や生産コストの増加(生産) 中~高
技術リスク リサイクル規制への対応、技術開発の遅れによる競争力の低下 低~中
リサイクル新技術の開発等、投資コストの増加
市場リスク スクラップ価格の上昇による原料コストの上昇 低~中
株主・金融機関の脱炭素方針による資金調達コストの上昇
アルミの代替素材の台頭によるアルミ市場の縮小 低~中
EVの普及によるガソリン車用部材の売上の減少
物理 急性 洪水・高潮被害による営業停止の発生
慢性 気温上昇による労働効率の悪化、労務費上昇 低~中

移行 商品・サービス 電動化製品(特にEV普及)に対する当社商品の増販 中~高
その他の脱炭素・省エネ関連商品の需要増 低~中
資源の効率性 高リサイクル性の観点からのアルミ需要の上昇 低~中

※ 高:100億円以上 中:10億円以上 低:10億円未満

将来における気候変動シナリオでは、自動車販売・製造の環境対応車比率が高まっていくものと見込まれ、走行距離伸長のための軽量化ニーズに加え、環境対応車に搭載されるバッテリーそのものの部材や、冷却のための放熱用部材といった商品群の需要の伸びが期待されています。また、カーボンニュートラルの推進に向けてはリサイクル性の高い商品群の価値が高まっていくと見込まれ、循環型社会への貢献が企業価値向上につながると考えています。