日本軽金属ホールディングス株式会社

リサイクルでサステナブルな社会に貢献

特殊合金スクラップも
大切な資源としてグループで循環します

日本軽金属(株)は、蒲原工場で鋳造した特殊合金をコイル状の板にしてタイ国へ輸出し、現地のグループ会社であるニッケイ・サイアム社でさらに圧延加工し、自動車熱交換器用フィン材として現地で販売しています。

ニッケイ・サイアム社では、加工していく過程でスクラップが発生します。このスクラップは特殊な元素を配合した材料のため、ニッケイ・サイアム社で転用できる材質がない状態でした。本来、発生したスクラップは元の材質に使用することで新たな添加元素や新しいアルミ地金の使用を抑えることができ、環境負荷を軽減できます。今回の場合、蒲原工場へ送り返すにもスクラップの形状だと積載効率が悪く、コスト面で問題がありました。そこで、スクラップ輸送効率のよいサイズの塊(スラブ)に鋳造し、日本の蒲原工場へ循環するしくみを構築し、2017年から運用を開始しました。現在では月100㌧程度のリサイクルを行っています。これにより、CO2排出量を年間約1万㌧(日本軽金属(株)試算)削減しました。

ニッケイ・サイアム社 購買担当者のお話

ニッケイ・サイアム社
Procurement Department Assistant Manager
スモンタさん

Q. このシステムを構築するにあたって苦労したことや工夫したことを教えてください。

A. システムを構築する過程で2つの問題がありました。一つ目は、スラブを鋳造するときに、コンテナへの積載効率のよいスラブサイズと設備上の最適サイズと調和する設計をすることに試行錯誤しました。
二つ目は、鋳造するときに他の材質のスクラップが混ざって成分が規格外になることが発生しました。これを防ぐため、炉に投入する前にスクラップに他の材料が混ざらないように管理したり、鋳造する前にスクラップの成分測定をしたりしました。このために新規に小型の測定機械も導入しました。
このような問題を解決してつくったしくみは在庫の削減にもつながり、コスト削減にも貢献できたことを喜んでいます。

新たなリサイクルシステムの構築を目指します
(アルミ車両の水平リサイクル)

アルミニウムは融点が低いため、スクラップを再溶解して簡単にリサイクルすることができます。リサイクルは「CAN toCAN」のようにリサイクルされて元の製品になるのが理想です。
これを水平リサイクルといいます。しかし品質上の問題や流通過程で他の材質や鉄などの違う金属が混ざる問題などで必ずしも元の製品に戻らないリサイクルが大半です。例えばアルミサッシは、住宅解体時に発生しますが、網戸やビスなどが付いており、そのままではサッシの材料として使うことはできません。網戸やビスを取り除いて分別し、他の材料が混ざらないように管理してリサイクル工場まで運ぶのは容易ではありません。こうしたことから、スクラップは循環するたびにグレードが下がって再使用できる範囲が狭くなっていきます。

そこで、日軽金グループでは研究開発拠点であるグループ技術センターで水平リサイクルを開発テーマとして取り組んでいます。スクラップを選別する方法、溶解したアルミから不純物を除去する方法、解体分解しやすい製品設計など、さまざまな角度から検討を重ねています。そのひとつとして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や日本アルミニウム協会と共同でアルミ製鉄道車両の水平リサイクルを実現する取組みを行っています。鉄道車両1台を解体して回収したスクラップを高速で分析・選別し、選別したスクラップを再溶解して鉄道車両の素材である押出材を製作しました。

アルミの残りかす(アルミドロス)まで活用します

アルミニウムを溶解すると、溶けたアルミの上にアルミを含む酸化物が生成され、それが空気と反応してアルミドロスとなります。アルミドロスは料理で例えると灰汁のようなものです。このアルミドロス中にはまだアルミニウムが残っており、これを回収装置で絞り出します。アルミニウムを絞りだした後の残りは、そのままでは産業廃棄物となって埋め立て処分となるところですが、さらに鉄鋼用脱酸※材として使うことができます。 溶けた鉄に加工されたアルミドロスを加えることにより、組成のコントロール以外に歩留りやエネルギー効率の向上にも寄与しています。

日軽産業(株)では日軽金グループ内で発生したアルミドロスを年間約5,400㌧回収しています。製造過程で発生した残りかすを有効利用することで、埋め立て処分となる産業廃棄物をなくし、鉄鋼の生産性を向上させるという最後までアルミニウムの価値を使い切るサステナブルな事業を展開しています。

※脱酸=酸素を除去すること

お客さまの声

大同特殊鋼(株) 知多工場 製鋼室
間内 良太様

当社の知多工場では月産14~15万㌧の特殊鋼材を製造しております。電気炉で鉄スクラップを溶解した後、取鍋精錬工程において、脱酸・脱硫や合金添加による成分粗調整を行い、その後脱ガス設備で水素などのガス成分の除去を行います。アルミドロスは電気炉溶解工程または取鍋精錬工程で約350㌧/月使用しています。電気炉では着熱効率が高いアルミドロスを使用することで、歩留の向上や電力エネルギーの削減につながっています。加えて、取鍋精錬を効率良く行う上で必要不可欠であるスラグ組成のコントロールを行う際にもアルミドロスを活用しています。また、費用対効果が大きい点もアルミドロスの魅力です。アルミドロスを使用して約35年となりますが、今後も継続的に使用していきたいと思います。

※スラグ...鉱石から金属を精錬する際に発生する副産物