日本軽金属ホールディングス株式会社

社外取締役インタビュー

私は2016年に社外監査役、2018年に社外取締役に就任して以来、当社の役員を通算7年間に渡り務めてまいりました。とても有意義な二つのキャリアを経験してきた者として、新たな企業理念の基に「新生チーム日軽金」として再出発した当社の挑戦や今後のあり方を忌憚なく述べさせていただきます。
 社外取締役が果たすべき役割とは、経営の一員として株主様からの受託者責任を全うし、企業の持続的発展に寄与することです。そのために何をすべきかといえば、一つは経営のモニタリングです。経営トップが利益相反を起こしていないか、私益を追求していないか、ひいてはその地位を利用して専横的な活動をしていないかということを監督、監視するということが第一です。監査役が内科医だとすれば、社外取締役は外科医であると私はよく例えるのですが、経営上の問題が起きた時には大胆にメスを入れ、時には経営トップを入れ替えるくらいの脳外科手術も辞さない覚悟で臨んでおります。もう一つは持続的発展に向けて企業価値を高めていくためにはどうすべきか、私自身のキャリアを踏まえた積極的助言の提供です。
 今年度は「22中計」を見直し、2023年度から2025年度の中期経営計画「23中計」を策定いたしました。背景には、地政学リスクの高まりによるサプライチェーンの変化、グループ会社である東洋アルミニウムの株式譲渡の意思決定、主要なお客様である自動車業界のEV化などに象徴される大変貌、カーボンニュートラルへの世界的要請などに伴う事業環境の激変が挙げられます。このドラスティックな変化にどのように対応し、持続的に発展していくべきか。私が取締役会で提案してきたことの一つは、高付加価値創造型へと経営構造を抜本的にシフトすることでした。例えば複合合金の創出や摩擦攪拌接合技術など当社グループが長年培ってきた技術・ノウハウや特許、ブランド力といった知的財産が突破口の一つとなるでしょう。知的財産への戦略的な投資・活用によりまさに "異次元の素材メーカー" としての可能性が広がるはずです。
 また、もう一つ強調してきたのは、ROEに代表される資本効率を高めていくことです。とりわけ、少数株主様の利害を考えながら経営に対する監視を行うとともにアドバイスを提供し、結果として企業価値の持続的発展に資することが重要ではないかと考えています。23中計では事業ポートフォリオを再点検するとともに、経営資源の最適配分に挑戦してまいります。
 当社の取締役会では、議長である岡本社長の "誠実さ、聞く力、オープンマインド" によるところも大きいと思いますが、自由・闊達な議論が展開されています。社外取締役が役割を発揮するための措置も充実しており、資料の事前配布、現場理解のための事業所訪問に加え、社長と社外取締役のインフォーマルな情報・意見交換の場がほぼ毎月設けられています。監査役会と社外取締役の間にも同様の場があれば、より深く経営課題を認識することができると思います。
 さらに取締役会の実効性を担保するためには、執行サイドにおける「問題の早期発見、早期対応」が重要です。報連相の原則として、"Bad News is Good News, Good News is No News, No News is Bad News"の警句を大切にすべきと考えています。
 そして現在の最優先課題は、品質等に関する不適切行為の再発を防止するための構造改革です。214件もの不適切行為に大きな驚きとともにとても残念な想いをもちました。
 コンプライアンスやガバナンスは多様な解釈があるものの、実はとてもシンプルなことで「うそをつかない」、「人をだまさない」、「自分だけ有利なポジションに置かない」の3点に尽きます。品質管理のシステム化やグループ管理のあり方を再検証しつつ、抜本的な構造改革を遂行していく決意で臨んでおります。私も経営トップの責任として二度と問題を起こさないため、再発防止策を着実に実行し、その進捗状況を、随時、ご報告させていただきます。
 企業の持続的発展のためには、"Growth( 成 長 )" と"Development(発展)" の相違を理解しながら、Developmentに挑戦していくことが必要です。ステークホルダーの皆様には、この「統合報告書」を通じて日軽金グループが経営的課題を克服し、社会的な信頼回復と資本効率向上のためにDevelopmentに挑戦する「新生チーム日軽金」の姿をご理解いただく一助となれば幸甚でございます。

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